テキュ

すうとして無理やりです

KID FRESINO - Coincidenceについてリズムに注目した簡易的な分析

Youtubeにて新しく公開されていたKID FRESINOの「Coincidence」という曲が気になって、昼に走り書きで済ませた分析を書き直して置いておく。

 

youtu.be

 

これまであまりヒップ・ホップは聴いて来ず好みだなという曲も無かったが、最近になって気になる曲が多数出てきた。この曲もその内の一つである。この曲の特徴といえば石若駿を始めとした演奏陣によるレベルの高い演奏、そこから紡ぎ出される変拍子の構造にあると思うのだが、初聴時その転がるような拍子にも関わらず一定不変のリズムが裏に流れているような気がしたので何故かを簡単に分析しておく。

 

まずは拍子の分析を始める。気になったのはHook(で合ってるのかな)部分の拍子である。*1.一拍が4/16(16分音符4つ分)から5/16に変わっているが、重要なのはコードが10/16で切り替わっているということと、鳴らされるコードが4つであるという点だ。コードは4つで1つのループを作るため、5/16を基準とした4拍子と解釈できる。しかし4つのコードが鳴らされるまでに40/16、拍子で分析するなら20/16、つまりこれは5/4拍子である。1つ目のHook部分は5/4拍子をさらに4拍子に分割したものであると捉えることができる。

二つ目のHookでも分母は変わらず3/4拍子に移行している。後半では4連符を基準としたポリリズム的な展開を見せる。

つまり有り体に言えばこの曲の拍子構成は4/4→5/4→4/4→3/4→4/4→5/4である。もうこの時点で何故「一定不変のリズムが裏に流れているような」気がしたのか自明である。分母が変わっていないからだ。しかしながら1拍を16分音符5つ分という単位で捉えたり、4連符を基準にしたりと同じ拍子内でも分割を行うことにより、目まぐるしく変化していくような楽想とある種の根底的な聴き易さを両立している。そしてリズムにおいて聴き易さとは掴み易さ、ノリ易さと同義である。さらにこれはKID FRESINO自身の声のリズムによって強調される。

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ここからは拍子から少し踏み込んだリズムの分析を始める。

上図はわたしが分析の際にノートに書いた図を綺麗に打ち直したものである。(わたしはそこまで頭がいい方ではないので、リズムを分析する際はこうしていちいち図にしないと分からない) lは上記した5/4拍子をさらに4拍子に分割しているということを表している。

1つ目のHook部分の後半(上記の分析から言うと5~8小節目)でKID FRESINOのラップは拍子変更後の1拍=16分音符5つ分を基準とした3連符を用いる。文で表すと少しややこしいが図のllを見ていただければパッと分かる。図は良い。線は16分音符1つ分、上段は拍子変更後の1拍、そして下段はそれを基準とした3連符である。

そして5/4拍子、そして元々の1拍=16分音符4つ分基準の3連符と重ねて比較してみたのがlllである。上段の図を作った時はこれは中々ご機嫌なリズムだという感想だったのだが、下段の図を作った時アレ!?となってようやく気付いた(というか聴いたとき気づけない時点で音楽家としてはどうかと思うのだが)、考えてみれば当たり前なのだが5拍子を基準にした3連符は3連符を基準にした5拍子を作ることでもある。赤で表された拍=元々の3連符の5拍目で2つのリズムが重なっていることが分かる。つまり1つ目のHookでのKID FRESINOのラップは3連符を基準にした5拍子を4拍子に分割し直したものだと言える。(文字で書くとややこしいんですが元の3連符を基準として解釈することが十分可能だと言いたいだけです)

初めて聴いた時にはとても奔放なリズムだと思えたが、トラック、ラップ含め基本のカウントを細かく分割し、3連符、5拍子という違った基準から捉えつつも全てを基本のカウントが整数で数えられる範囲に留めているのだ。(最初から1,2,3,4,と手を叩きながらカウントしてみれば1発で分かるが、カウントから拍子が外れることはない。)

1つ目のHookでのKID FRESINOのラップは3連符を基準にした5拍子であると言ったが、さらに次のバースの後半では「元々の」3連符を強拍の位置をズラしながら滑らかに見せることでリズムの全体的な相関を無意識に知覚させる構造になっている。曲の終わりで16分音符の確定的なリズムを演奏することも、この曲は16分音符と3連符という基本的なリズムから捉えることができるということを潜在的に気付かせる役割があるように思える。

 

どうでもいいですが、雪の中を笑顔で駆け回るKID FRESINOは可愛らしいですね 他の曲も聴いてみます

 

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*1) 通常こういった表記はしませんが、文量がすごいことになってしまうので便宜上こう表記しています